最近、「換気量の計算」に関するお問い合わせをたくさんいただいています。 |
厨房設計で忘れちゃいけない「換気量の計算」
厨房の設計で意外と見落とされがちなのが「換気量の計算」。
これは、適切な換気口を選ぶ目安になる大事な工程です。
計算を誤ると、通気不足によるトラブル(煙がこもる・ニオイが残るなど)にもつながります。
設計に関わる方は、今一度「基本の換気計算」を見直しておくのがおすすめです!
必要な換気量の出し方は2パターン!
換気量は以下の2通りの方法で計算し、「多い方」の数値を採用します。
- 建築基準法に基づく計算
- フードの大きさから算出する方法
例として、以下の条件で計算してみます
- バーナー2口(発熱量:1台あたり17.4kW/15,000kcal/h)
- フードは三辺開放タイプ
- テーブルサイズ:900mm × 750mm
- 換気設備なし
①建築基準法に基づく計算
必要換気量(V)= N × K × Q
V
:必要換気量(m³/h)N
:定数(換気設備の有無や排気フードの位置で決まる)K
:理論廃ガス量(燃料の種類で変わる)Q
:発熱量または燃料消費量
条件 | Nの値 |
---|---|
フードなし or 器具とフードの距離1m以上 | 40 |
器具とフードの距離1m以下 | 30 |
燃料 | Kの値(理論廃ガス量) |
---|---|
都市ガス13A | 0.93 m³/kWh |
LPG(プロパン) | 12.9 m³/kg |
都市ガスを使う場合の計算
V = 40 × 0.93 × (17.4 × 2) = 1,290 m³/h
LPG(プロパン)を使う場合の計算
Q = 17.4kW × 2 × 860 = 29,900 kcal/h
燃料消費量 = 29,900 ÷ 12,000 = 約2.49kg/h
V = 40 × 12.9 × 2.49 ≒ 1,280 m³/h
②フードの大きさから算出する方法
V(排気量)= フードの面積 × 面風速 × 3600
面風速(VF):フードの種類で変わります
フード下面平均排気 面風速(m/s) (対象器具から排気フードの距離が1mの場合) | フード設置環境 | ||
---|---|---|---|
一般的な推奨値 | 弊社での実施値 | ||
0.9〜1.2 | 0.8 | 四周開放 | ![]() |
0.8〜1.1 | 0.5 | 三辺開放 | ![]() |
0.7〜1.0 | 0.4 | 二辺開放 | ![]() |
0.5〜0.8 | 0.3 | 一辺開放 | ![]() |
フードサイズ:
- 長辺:900mm + 150mm × 2 = 1200mm(1.2m)
- 短辺:750mm + 150mm = 900mm(0.9m)
計算
V = 1.2 × 0.9 × 0.5 × 3600 ≒ 1,940 m³/h
結果まとめ(どちらを採用するか?)
計算方法 | 換気量 |
---|---|
建築基準法に基づく計算 | 1,290 m³/h |
フードサイズからの計算 | 1,940 m³/h |
➡ 多い方を採用するため、必要換気量は 1,940 m³/h となります。
その他の換気量の目安
● 有効換気量(部屋の面積で決める)
V = 20 × 床面積 ÷ 1人あたり面積
例)床面積10㎡、1人あたり3㎡ → 66.7 m³/h
● 一般排気量(トイレや客席など)
例:トイレやホールの換気ファン合計 → 500 m³/h(仮)
総合換気量の例(すべて合計すると)
種類 | 換気量 |
---|---|
厨房(フードから) | 1,940 m³/h |
有効換気量 | 66.7 m³/h |
一般排気量 | 500 m³/h |
合計 | 約2,500 m³/h |
この場合に必要な換気設備の例
給気口の組み合わせ | 処理風量合計 |
---|---|
TO-35 ×1台 | 3,500 m³/h(1台) |
TO-15 ×2台 | 1,500 m³/h ×2台 = 3,000m³/h |
補足
- 「換気量」と「排気量」「通気量」は同じ意味で使っています。
- 通気量を排気量の8割にしているケースもありますが、それだと外気負荷やドラフト(冷気の流れ)に対応できない場合があります。